勝負と手加減-子供とボドゲを考える―

ボードゲームは(ソロルールが設定されている一部のものを除いて)1人ではできません。
ほとんどの場合、2名以上のプレイヤーが参加することでゲームが成り立ちます。
その際、プレイヤーの中に子供がいることもあるでしょう。
当然大人と子供ですから知識と経験に差があって当たり前(中にはスーパーキッズもいるかもですが)、大人が全力でプレイしてしまうと子供が負け続けてしまったり、あるいは子供に花を持たせようと手加減しすぎるとゲームの本質が失われてしまったりと、なかなか程よい匙加減というのは難しいと思います。
もちろん皆さんそれぞれに考え方があると思いますし、それを否定するものではありませんが、ここでは一つの事例として私の経験をご紹介するとともに、私の考え方をご紹介したいと思います。

何があったのか?その1

友人たちが集まってゲーム大会が開催され、参加してきました。
参加者の多くは同年代の大人ですが、中に2名、子ども連れで参加された方がいらっしゃいました。一人は小学校低学年の女の子、もう一人は中学生くらいの男の子です。
まず参加したゲームは白雪姫のアップルーレットというゲーム。

白雪姫のアップルーレット

  • ゲームデザイン: オカベニアス(岡部拓也)
  • 発売: GOTTA2

このゲームは正体隠匿の所謂人狼系ゲームで、白雪姫陣営と女王陣営に分かれて毒リンゴを押し付けあうゲームです。
プレイヤーはそれぞれ白雪姫、女王、それぞれに加担する小人の役割が与えられ、基本的には白雪姫陣営は白雪姫の生存を、女王陣営は姫の殺害を目指すことになります。
また、一人だけ特殊なプレイヤーが小人のロゼ、白雪姫が生存かつ自分自身も生存すると”単独勝利”となります。
もちろん誰がどのキャラクターを担当しているかは公開されておらず、ゲームを進める中で会話やカード効果で情報を引き出しながら推理する、という流れになります。

私が担当したのは白雪姫陣営の小人で、ゲーム開始時に誰が白雪姫担当のプレイヤーなのかを知ることができる特殊能力を持っていました。
ですので、基本スタンスはいかに白雪姫を生存させるか、ロゼを殺害するか、ということになりました。

ややあって、最終フェイズ、女王と思われるプレイヤーは絞られていて、一番怪しそうなプレイヤーを殺害することには成功したのですが、残念ながらそのプレイヤーは女王ではありませんでした。
最終フェイズでは女王プレイヤーはその特殊能力として毒リンゴを所持していた場合その毒リンゴを任意のプレイヤーに押し付ける(殺害する)ことができるのですが、今回の女王プレイヤー(中学生の男の子)は毒リンゴを持っており、誰にリンゴを押し付けるかを選ぶ、という状況になっていました。

この時点でロゼを担当してたのが小学生の女の子(確定はしていなかったと思いますが)、また白雪姫を担当していたのが女の子のお父さん(冷静に考えれば正体を見破ることができる状態にあった)でした。
若干自身の勝利条件を勘違いしていた部分もあったようですが、女王担当の男の子はリンゴを女の子に押し付けようとしていました。
そのままリンゴを押し付ければロゼが死亡し白雪姫は生存、自分も含めて白雪姫陣営が勝利します。

よし、勝った!と思った瞬間、白雪姫役のお父さんは男の子に、一度女の子に押し付けたリンゴを戻し、状況の解説を始めてしまいます。
ちょっと待って、このカードが公開されていて、かつすでに正体がわかっている役職がこれとこれだから、白雪姫は自分であることがわかる、また女王の勝利条件はあくまで姫の殺害なので自分にリンゴを渡すのがセオリーである、と。
(私は、えっそれをいま言っちゃうの?しかも一度プレイした内容を戻してやり直し?とちょっとモヤモヤしましたが、まぁ子供相手だししょうがないか、と思っていました)
その話を聞いた彼は白雪姫に毒リンゴを押し付け直し、白雪姫は死亡。

女王の彼が勝利!と思いきや、白雪姫は特殊カード”王子様のキス”を所持しており、毒リンゴによる死亡から復活してしまったのです。
その結果白雪姫は生き残り、かつロゼのプレイヤーも生き残ったので、ロゼを担当した女の子の単独勝利となってしまいました。

子供に花を持たせてやる、という意味ではそれでもいいのかもしれませんが、結果的にゲームの結果が捻じ曲げられてしまいました。

何があったのか、その2

昼食を挟んで午後の部、2卓に分かれて重めのゲームをプレイ。
私の卓は私が持ち込んだSurviveをプレイすることになりました。
Surviveは当サイトでもレビューしていますので、詳細はそちらをご覧ください。)

この島はもうだめだ!みんな、無事に逃げ延びろよ!(俺は一足先に離脱するけどなっ)「サバイブ!(アイランド)/SURVIVE」

参加者は件の子供2名とお父さん。
ルールを説明し、ゲーム開始。

しばらくするとやはり少々違和感を感じ始めました。
このゲームは自分のプレイヤー駒を安全地帯逃がすことを目指すゲームなのですが、相手プレイヤーの邪魔をすることもできるようになっています。
どうもさっきから邪魔行動が私に集中している気がする・・・・。

それもそのはず、女の子とお父さんは親子間でのバトル、足の引っ張り合いはしない。
女の子は誰に対してもあまり攻撃行動をとらない。
お父さんは自分の子供はもちろん、男の子に対しても手加減のつもりかあまり攻撃的行動はとらない。
男の子は小さな女の子への攻撃は遠慮している。
しかも(これはゲームの展開上たまたまではあるのですが)男の子とお父さんの利害関係がある程度一致してしまっていたため、必然的に攻撃行動は私に集中することに。

事実、私以外のプレイヤーは、(私以外の)プレイヤーの意思で退場させられた駒及び破壊された脱出艇が皆無だったのです。
目の前に駒を満載した脱出艇があって、破壊できる手段を手にしているような状態であってもそれをやらない。
既により得点を重ねているプレイヤーがいて、普通は自分が勝とうと思ったらそのプレイヤーを阻止しなければならないはずなのに、何故か凹んでいる私がさらに叩かれる状況ってなんなんだそれ、って感じになってしまいました。
もはや四面楚歌ならぬ三面楚歌です。

更にはこのゲームでもお父さんのアドバイスが随所で発動、時には既に移動を終えた駒をもとに戻してやり直しなんて場面も少なくありませんでした。
結局そんな状態でどうにかなるはずも無く、結果は私の一人負け。
幸い高得点駒を集中的に逃がすことができたので大差にはなりませんでしたが、正直なところ私一人だけがなんだか後味の悪いゲームになってしまいました。

なぜそうなったのか?

私も人の親ですので、子供に勝たせてやりたい気持ちはわからないでもありません。
しかしながら、今この場でそれをやることが正しいと言えるのでしょうか?
改めて考えてみると、一つの要因として認識の違いがこの状況を生んだように思えます。
つまり、大人のボードゲーム大会に子供が混じっていると捉えるか、子供の遊びに親が付き合っていると捉えるか。
私は前者としてゲームをプレイしていましたが、件のお父さんは(無意識に、かもしれませんが)後者の感覚でいたのではないでしょうか。

結局のところ

私はゲームをプレイする上で必要なことは、最低限各プレイヤーが自分の勝利を目指すことにあると思うのです。
その結果としてボロ負けしたりしてもそれはそれでよいと思います。
もちろんアナログゲームの醍醐味は勝つことだけがすべてではありませんし、いろいろな楽しみ方があっていいのですが、それはそのゲームの本質を外さないという前提に立ってのことだと思うのです。
最初から自らの勝利を捨ててかかったり、誰かの足を引っ張ることを第一義にプレイしてしまうと、本来そのゲームに設定されたゲームバランスが大きく崩れることになってしまいますし、勝っても負けてもプレイヤーとしてはどうしても違和感の残る結果になってしまうと思うのです。

子供と一緒のプレイをどうするか?

子供と一緒にゲームする場合を考えると、どうしても大人と子供ですので経験豊富な大人の方が強いケースが多いと思いますが、目に見えた形で手加減したり、あからさまに子供の便宜を図るプレイをしたり、ゲーム中にあまりにクリティカルなアドバイスしたり、ルールを捻じ曲げたりすることには賛成できません。
なぜなら、負けの悔しさを知らなければ次のゲームでの工夫が出てこないし、勝った時の本当の嬉しさも味わうことはできないと思うからです。
もちろんそうなれば”もっとゲームやりたいな”というモチベーションにもつながらないと思うのです。
また、共にプレイした大人プレイヤーに対し、失礼にもなりかねないと思うのです。
子供を優先するあまり、他の大人プレイヤーを白けさせることにもなり得るからです。
もちろん一切手心を加えずにボロクソにすればいいとは思いませんが、それとわからない程度の手心の加え方が必要なのではないでしょうか?

具体的に子供にどんな配慮の仕方があるのか、たとえばこんな方法ならどうでしょうか。

  • その場その場で、最善手を打つのではなく、あえて次善手を取る
  • さりげなく自分の利益になる行動の中で、子供にも利益が還元されるような行動を取る
  • ルール上許可されていても、あまりにえげつないやり方は控える
  • 子供にハンデとなる有利な条件をつけてプレイする(カードの初期枚数を増やす、ダイスを振る回数を増やす等。その旨は事前に公開、周知してその前提でプレイする。その代わり結果を覆すことはしない。)

そして例えプレイ中に子供の判断が間違っていたとしても(ルールの解釈を間違えている場合などは別ですが)、その場はそのままゲーム続行し、ゲームが終わった後で”実はあの時こうしていれば逆転できていたんだよ”というような形でアドバイスしてあげればよいのではないかと思っています。
そうすればたとえ負けても悔しさだけが残るようなことにはならず、次回に向けての動機付けにもなると思うし、じゃぁもう一回!ということになるかもしれませんよ。

つまり、加減をするというのはそれなりにプレイヤースキルが求められるということでもあるんですよね。
上記は大人が子供と遊ぶことを前提に書いていますが、ベテランと初心者が一緒に遊ぶような場合にも当てはまると思います。

とかくベテランはこのゲームはこう攻めるのが当たり前だ、というような持論をお持ちの場合が多いですが、逆に初心者は色々やってみたかったりもするわけです。
それぞれの価値観を認めつつ、ゲームの意義に反しないようなプレイを心掛けたいですね。

うーん、なかなか難しいねぇ

ゲームはコミュニケーションだからね。
相手に対する思いやりを持ちながらやる必要があるよね。

(にゃんこに対しては?)

以前レビューした、子供と一緒にできるボードゲームを取り上げた冊子『ボ育て。』では、どのように子供にハンデをつけるかなど、親サイドでさまざまに工夫しているコメントが、参考になりそうですよ!

こどもと一緒にボードゲーム!どれならできる?『ボ育て。vol.3』

真剣勝負でありつつも他人に思いやりを持って、楽しくゲームしたいものです。